糖尿病とは?知っておきたい基本をわかりやすく解説

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糖尿病は、体内でインスリンの働きが不足するか効果が低下することにより、血糖値が異常に高くなる慢性の疾患です。

厚生労働省からは、糖尿病は急速に増加しており、発症予防の取組が重要との見解が発表されています。ひとたび発症すると治癒が難しいこともあり、この病気を理解し、日ごろから予防を心がけることは、健康を守るために非常に重要です。若い人でも珍しくない疾患である点にも注意が必要となります。

本記事では、糖尿病の、種類や主な症状、発症する原因や、治療法など、わかりやすく基本を解説していきます。

糖尿病とは

糖尿病とは、体の中で糖の量を調節するインスリンというホルモンの働きがうまくいかず、血糖が増えてしまう病気です。

インスリンは膵臓から分泌され、血糖値を適切に保つ役割を持ちます。このインスリンが上手く働かなくなり、慢性的に血糖値が高い状態が続くと、血管が傷ついて、心臓病や失明、腎不全など、重い合併症を引き起こす原因となります。

糖尿病は、さまざまな健康問題につながる可能性があるため、日ごろから予防を心がけたうえで、発症後は早めの治療が大切です。生活習慣が大きく関与していることから、健康的な食事、定期的な運動、必要に応じて薬物治療が推奨されます。

糖尿病の主な症状

糖尿病にかかると、さまざまな症状が現れます。

初期は、血糖値が高い状態(高血糖)が持続するだけなので、表立った異常は発生しません。しかし、長期間、高血糖が続くと、血管は確実に傷つきます。初期には多尿や口渇、体重の減少、疲れやすさが見られることが多いです。これらは、体が適切にエネルギーを利用できないために起こります。

病気が進行すると、手足のしびれや視力の低下、足のむくみ、立ちくらみなどが起こることがあります。これらの症状は、糖尿病によって引き起こされる神経障害や血管の問題によるものです。

また、長期間にわたって血糖値が高い状態が続くと、心筋梗塞や脳梗塞などの大きな健康問題を引き起こすこともあります。消化器系の問題や、非常に高い血糖値による昏睡状態になる場合もあります。

糖尿病の主な種類

糖尿病は、いくつかの種類に分類されます。主なものは以下の3つです。

1型糖尿病

このタイプは、体の自己免疫システムが膵臓のβ細胞を攻撃し、破壊することでインスリンの生成が止まる場合に起こります。主に若年層で見られることが多いですが、年齢を問わず発症することもあります。自己免疫反応によるものと、原因不明で発症する特発性のものがあります。1型糖尿病患者にはインスリンを外側から補う治療が必要です。

2型糖尿病

中高年に多いこのタイプは、体の細胞がインスリンの効果にうまく反応しなくなるインスリン抵抗性や、膵臓のインスリン分泌が減少することによって生じます。日本の糖尿病患者の多くは2型。発症の可能性がある人を含めると、患者数は成人の6人に1人、約1870万人にのぼっています。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて見つかる血糖の上昇を指します。この状態は糖尿病と診断されるほどではありませんが、注意が必要です。妊娠中の女性は赤ちゃんに絶えず栄養を供給しています。そのため、空腹時に血糖値が普段より低くなることがありますが、胎盤のホルモンがインスリンの働きを妨げるため、食後の血糖値は上昇しやすくなります。赤ちゃんには適量の糖が必要です。糖が多すぎたり少なすぎたりすると、成長に影響が出ることがあるため、妊娠中は十分な栄養を赤ちゃんに与えながら、血糖値も管理する必要があります。多くの場合、妊娠糖尿病は出産後に血糖値が正常に戻ります。妊娠糖尿病を経験した女性は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高まるため、出産後も健康管理を続けることが大切です。

上記以外にも、遺伝の関係や膵臓や肝臓の疾患によって引き起こされるものもあります。

糖尿病の主な原因

糖尿病になる原因はいくつかありますが、主に以下が関係しています。

遺伝的要素

遺伝的にインスリンが分泌されづらい体質という方がいます。
しかし、あくまで通常よりも糖尿病になりやすいというだけで、必ず発症するというわけではありません。

生活習慣の影響

多くの糖尿病は、生活習慣と密接に関連しています。たとえば、高カロリーな食事を続けると、体のインスリンが足りなくなることがあります。運動不足や肥満も、体がインスリンにうまく反応しなくなる原因となります。

年齢の影響

加齢により、体の細胞がインスリンに反応しづらくなります。特に40歳を過ぎると、2型糖尿病のリスクが上がります。

その他の環境要因

日々のストレスや、食事の時間が不規則な生活も、血糖値のコントロールを難しくします。これらも糖尿病を引き起こすリスクを高める要因です。

糖尿病の予防方法

糖尿病を予防するためには、日常生活でいくつか注意すべき点があります。

健康的な食事

バランスの取れた食事を心がけ、エネルギー量を適切に保つことが大切です。朝食をしっかりと摂り、夕食は軽めにすると良いでしょう。野菜を食事の最初に食べ、ゆっくりとよく噛んで食べることで、食べ過ぎを防ぎます。白米やパン、麺類などの糖質を過度に取り過ぎないように気をつけてください。

適度な運動

運動も重要で、日常的に体を動かすことが推奨されます。歩ける距離は積極的に歩くようにし、休日には掃除や庭仕事を行い、階段を利用するなどして、無理のない範囲で活動的な生活を送ることが効果的です。

ストレスを溜めない

ストレスの管理も予防には不可欠です。リラックスできる趣味を持つ、友人と交流する、温かいお風呂にゆっくり浸かるなど、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。また、良い睡眠を取ることも大切です。心身がつらい時は無理をせず、信頼できる人に相談しましょう。

体重管理

適正な体重をキープすることは、糖尿病を予防する上で非常に重要です。自分の身長から算出される適正体重やBMI(ボディマス指数)を把握し、特に20代から適切な生活習慣を心がけることが推奨されます。BMIが25以上の場合は肥満とされ、特に30代からは肥満が増えるため、日頃からの注意が必要です。

糖尿病の治療方法

糖尿病の治療として、主に食事療法、運動療法、薬物療法という3つの方法があります。これらは医師の指導のもと、状態に合わせて行われます。

食事療法

この治療の基本は、1日3回、定時に栄養バランスの取れた食事をとることです。間食は基本的に避け、全ての食事で量を適切に調整します。糖質制限をはじめ糖尿病向けの食事制限は家族全員の健康維持にも役立つため、皆で同じ食卓を囲むことも可能です。低カロリーで栄養豊富な食事は、他の生活習慣病の予防にも繋がります。

運動療法

運動は体のさまざまな機能を改善する効果があります。適度な有酸素運動、例えば歩行やジョギングは、体重の管理、血圧の低下、血糖の改善に役立ちます。運動はまた、ストレス解消にも効果的ですが、無理のない範囲で行うことが大切です。自分に合った運動を医師と相談して決めましょう。

薬物療法

食事や運動だけでは血糖のコントロールが難しい場合、薬物療法が必要になります。1型糖尿病の患者さんや、2型糖尿病で他の治療が効かない場合はインスリンの使用が必要です。薬の副作用に注意しながら、医師の指示に従って正しく薬を使用しましょう。

まとめ

糖尿病は、体内でインスリンが不足したり、働きが弱まったりすることで血糖値が慢性的に高くなる病気です。初期段階は自覚症状がほとんどないため、気が付かないうちに進行していることもあります。

症状が悪化すると様々な合併症を引き起こす恐れがあるため、高血糖の診断を受けたら放置せず、早めに治療や予防に取り組みましょう。

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記事の監修者

湘南台しらがクリニック院長 白神 敏雄のイメージ画像

理事長 / 院長 白神敏雄

日本外科学会専門医・日本透析学会会員・日本内科学会会員・日本医師会産業医

内科として糖尿病、高血圧、胃腸疾患の治療を医院では行っております。
京都の高雄病院の江部先生と連携し、糖質制限による糖尿病治療を行っております。