糖尿病患者の糖質制限のやり方は?注意点も解説
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糖尿病患者にとって、糖質制限は食事療法における重要な要素です。しかし、糖質は体にとって必要な栄養素なので、一人ひとりの状態に合わせて進めなければ、かえって健康を害してしまう恐れもあります。本記事では、糖尿病患者が糖質制限をする際の基本的なやり方と、注意点を解説します。
糖質制限とは?
糖質制限とは、糖質の摂取量をおさえ食後の血糖値を上がりにくくすることです。糖質は米類・麺類・パン類・いも類・果物・お菓子などに多く含まれているため、これらの摂取量を減らすのが基本です。
また、糖質制限ではステーキなどの肉料理やアルコールなども摂取できます。3食しっかり食べられるため物足りなさを感じにくく、継続しやすいのが特徴です。
糖尿病患者に糖質制限をする必要性は?
糖尿病治療の目標は、血糖値をコントロールして正常な状態に近づけることです。しかし、血糖値はインスリン・自律神経の乱れ・食事や運動などの生活習慣で変動するため、コントロールが非常に難しいです。
また血糖値が正常域に戻っても、治療開始前の生活習慣に戻ってしまえば、血糖値はすぐに上昇してしまいます。そのため糖尿病は一度発症すると、一生付き合わなければなりません。
糖尿病患者にとって糖質制限は、血糖値の急上昇を防ぎ、合併症を予防することを目的に行われます。カロリー制限食のようなストレスもないため、食事に気を遣う必要のある糖尿病患者にとって適した治療法といえます。
糖質制限のやり方は?
糖尿病にり患しているからと糖質をむやみに除去してしまうと、健康に悪い影響を与える可能性があります。病気と付き合いながら糖質制限をするには、以下のポイントを意識しましょう。
糖質を制限する量を決める
まずは主食をはじめとした糖質や炭水化物の多い食品を減らして、摂取量を調節します。はじめて糖質制限を実施される方の場合は、1日の糖質摂取量は70~100gが推奨されています。極端な制限が必要ないためストレスを感じにくく、患者にとっても無理なく続けやすい量です。
また、投薬治療中の方や腎機能が低下されている方が、過度な糖質制限に取り組むと、かえって不健康な状態に陥ってしまうことがあります。糖質制限をする際は、必ず医師に相談したうえで制限量を決定しましょう。
食物繊維・脂質・タンパク質を増やす
糖質や炭水化物を減らしただけでは、栄養不足になる恐れがあります。減らした分は、ほかの栄養素で補いましょう。特に、以下の栄養素を意識してとるようにするのがポイントです。
- 食物繊維…血糖値の吸収を穏やかにする。
- 脂質…体のエネルギーを作る。満腹感を得やすくなる。
- タンパク質…筋肉や肌・ホルモンなどの原材料。満腹感を得やすくなる。
また、体の調子を整えるビタミンやミネラルも取り入れましょう。とはいえ、1食ですべての栄養素をカバーしようとする必要はありません。3食トータルでまんべんなく栄養素を取るようにしてください。
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食べるときは食物繊維から
血糖値の上昇をおさえるには、糖質の吸収を緩やかにする必要があります。食事のときは、糖質の吸収を穏やかにする食物繊維が含まれるものから食べましょう。具体的には、野菜・キノコ・海藻などです。
これらを食べたら、次は肉や魚・大豆製品などのたんぱく質を多く含む食材を食べます。ご飯やパンなどの主食は最後に食べてください。
主食や砂糖の種類にも注意する
同じ原料から作られている主食でも、精製方法によって糖質の吸収速度が異なります。たとえば、玄米や全粒粉パンなどの未精製の穀物から作られた主食は、米や小麦の食物繊維を含んでおり、糖質の吸収も穏やかです。
また砂糖も同様に、種類によって血糖値の上がり方が異なります。白砂糖は摂取後に血糖値が急速に上昇するのに対し、黒砂糖には糖の吸収をおさえる成分が含まれています。そのため、白砂糖よりも黒砂糖の方が糖質制限に適しているといわれています。
炭水化物や砂糖を使う際は、量だけでなくその種類や特徴も意識しつつ選択しましょう。
腹八分目の量をゆっくり噛んで食べる
血糖値の上昇を緩やかにするには、食べる量や食べ方も重要です。腹八分目の量を、ゆっくり噛んで食べましょう。時間をかけて食べると満腹感を得やすく、血糖の上昇を抑えられます。1回の食事は、最低でも15~30分かけて食べてください。
また、テレビやスマホなどを見ながら食べると、早食いや食べ過ぎにつながりかねません。食事ときちんと向き合い、舌だけでなく五感で食事を味わいましょう。
糖尿病患者が糖質制限をする際の注意点
健康な方と同じように糖尿病患者が糖質制限をすると、かえって健康を害する恐れがあります。以下の注意点を意識しながら行ってください。
動物性食品と植物性食品をバランスよくとる
糖質制限は食事制限を厳しく行う必要がないため、肉や魚といった動物性食品をメインにした献立を考える方もいます。動物性食品には良質な栄養素が多く含まれていますが、過剰に摂取すると飽和脂肪酸やコレステロールが増加します。結果的に、心筋梗塞や脳卒中といったリスクを高めてしまうため注意が必要です。
また動物性食品を摂取しすぎると、腸内環境が乱れ便秘の原因になります。野菜、豆、海藻類、キノコなどの植物性食品には食物繊維が多く含まれており、糖質の吸収を穏やかにする効果があります。糖質制限を実施して健康を害さないためには、動物性食品と植物性食品の両方をバランスよく摂取しましょう。
糖質だけでなく塩分にも注意
糖尿病の合併症は、高血圧や脂質異常症も深く関係します。糖尿病患者の場合、健康な方よりもこれらの合併症リスクが高くなるため、糖質だけでなく塩分にも注意しなくてはなりません。
献立を考える際は、塩辛や干物などの塩分の高い加工品は避けましょう。また、脂身の多い食事も注意が必要です。味付けも、スパイスやハーブをうまく利用して薄めの味付けでも満足感を感じられるよう工夫しましょう。
夜遅くに食事をしない
遅い時間に夕食をとると、昼食からの時間が空きすぎているうえに、その後すぐ寝るためエネルギーが消費されません。また朝になっても食欲がわかず、朝食を抜かしてしまう原因になります。さらに、次の食事で体がエネルギーを蓄えようとするため、太りやすくなってしまいます。
糖質制限をしていても、誤った食習慣で太ってしまっては意味がありません。夜遅くの食事は避けて、寝る2~3時間前には夕食を済ませるようにしてください。
飲み物の糖質にも注意
糖質制限中、栄養を効率的に摂取するために野菜ジュースを飲む方もいます。しかしジュースは吸収に優れている分、血糖値を急激に上昇させてしまいます。糖質制限をする際は、飲み物の糖質にも気を配りましょう。
なお、働きながら糖尿病の治療をしている方のなかには、食事会などでお酒を摂取する場面もあります。その場合は、できるだけ焼酎やウイスキーなど糖質が含まれない蒸留酒が選びましょう。
ただし、アルコールは摂取しすぎると、合併症のリスクが増大します。担当医と相談したうえで、適量を遵守してください。
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まとめ
糖質制限は、糖尿病患者が健康に過ごすのに有効な手段です。カロリー制限食よりもストレスが少ないため、継続しやすいことが特徴です。ただし、使用する食材はもちろん、食べる順番や食べ方には十分に注意してください。
また、健康維持は食事だけでなく、運動や睡眠なども大切です。糖質制限の効果を高めるためにも、軽い運動をしたり質の良い睡眠をきちんととったりする習慣も身につけましょう。
記事の監修者
理事長 / 院長 白神敏雄
日本外科学会専門医・日本透析学会会員・日本内科学会会員・日本医師会産業医
内科として糖尿病、高血圧、胃腸疾患の治療を医院では行っております。
京都の高雄病院の江部先生と連携し、糖質制限による糖尿病治療を行っております。